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アルコール関連障害障害 ―第15回―
断酒の3本柱
著者の勤務する総合病院精神科においも、ご多分に漏れず精神科勤務医の減少、仕事のますますの増大によって筆を持つ元気がありませんでした。前回は、アルコール依存症の治療は、単にお酒を飲まないようになれば治療が終結するのではなく、考え方や生き方を変える必要があることを述べ、その一つとして内観療法があることまで述べました。今回は、アルコール治療の場面で言われる「断酒の3本柱」についてページを割いてみましょう。
酒を止め続けるために何が必要なのでしょうか。ある人は根性だとか、意志の問題と言われるかもしれませんが、意志を強くさえすれば酒を断てるとは限りません。正しい戦略や戦術が必要になります。今回のテーマである断酒の3本柱という具体的な行動を実践することが、酒を止め続けるために必要な指針にあたります。もちろん、意志は必要なことですが、酒を飲みたくなってこれを利用しようとするとうまく機能しないのが一般的で、以下の3本柱を実践する際には大いに働くと思います。
この3本柱とは、具体的に列挙しましと通院治療、 抗酒剤の服用、自助グループへの参加です。それぞれは、そんな難しいことではないことです。病気ですから通院し、薬を飲み、お互いに助けあう自助グループへ参加する、誰でもできるように思いがちです。しかし、この実践は意外に継続するとなるとなかなか難しいものです。大抵のア症者の方は、抗酒剤の服用をいろいろな理由をつけて中止するのが一般的で、次は人によって通院治療の人もいますし、自助グループ参加を中止する人もいます。私の病院では、何回も繰り返し入院中に3本柱を言っていただき、その必要な理由も理解していただくように努力しているつもりですが、言葉は覚えていただいても実行していただける人は少ないのが実体です。
通院治療は、説明もする必要もありませんが、断酒継続に欠かせません。ア症者は、一般的に治療より仕事を優先しやすく、飲んでいるときは仕事より飲むことを優先しているのですが、それを逆転させ、飲まないこと、つまり通院治療を優先することを体で覚える必要があります。私は、退院後1年間は通院することを勧めています。理由は1年間断酒を続けることができると、その後の再飲酒率は急激に減少するという理由です。
次に抗酒剤の服用です。抗酒剤とは、アルコールの分解を遅らせることによって、少量の飲酒でも、紅潮、悪心、嘔吐、激しい頭痛、極度の心悸亢進、呼吸困難、血圧低下などの苦痛の症状をもたらすアルコール反応誘発物質のことを指しており、日本では液剤のシアナマイドと粉薬のノックビンがあります。これらの薬を服薬することによって、嫌な体験を避けたい、飲まない行動を期待するもので、「転ばぬ先の杖」として利用されているものです。よく間違える方がいますが、酒が嫌いになる薬ではありません。私は、通院と同じように最低1年間の服薬を推奨しています。ただ、ア症として認めていない方は、シアナマイドの液を、家族にわからないように水に変えて飲んでいる方も見受けられます。このように、この病気の難しさを垣間見ることがあります。
最後に、自助グループへの参加ですが、単に酒を止めるだけでなく、自分の生き方や考え方を変えるには、以前に紹介した「内観」と同様にこの実践が必要と考えます。次回に自助グループについて詳しく触れたいと思います。この実践については、1年ではなく3年間を勧めています。
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