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アルコール関連障害障害 ―第16回―
自助グループ
前回はアルコールをやめるには、「断酒の3本柱」のように具体的な実践が必要であることを強調しました。いくら「酒を止めます。頑張ります」を言っても断酒はなかなかうまくいきません。精神論ではアルコール依存症という巨石には歯が立たないのです。それよりは、「水の一滴は岩をも砕く」の心構えで事を行うことが大事と思います。水の一滴のように、繰り返しの行動が大事であり、その一つが自助グループの参加になります。
では、この自助グループ(Self Help Group)とはいかなるものでしょうか。同じ悩みを持った患者や障害者どうしが、互いの困難な問題を語り分かち助け合い、自分たち自身で、問題を回復していくことを目的としたグループ活動を指します。そのグループでは、自分や社会を変えていくことを方向としており、その活動の根幹をなすものが、例会やミーティングと言われています。定期的に会員が集まり、会員間の交流や自分を磨く場となっています。この自助グループの代表がAAや断酒会です。
AAは、アメリカで1935年に、ビルとボブの二人のアルコール依存症者の出会いから始まり、現在は世界的な相互扶助のネットワークを持つ老舗ともいうべき自助グループです。このような自助グループは、やがてギャンブル依存症や、摂食障害、買い物、仕事などさまざまな嗜癖を持つ人々により、AAの基本を取り入れた自助グループが組織され広がっています。このAAは、Alcoholics Anonymous(AA)の略で、アルコール依存症者の匿名(アノニマス)グループと呼ばれています。さらに、互いに名前を伏せる匿名性や非組織、献金性により成り立っているのが特徴で、後で触れる断酒会とは違った点もあります。 この自助グループには、2つのバイブルともいうべきものがあり、AAメンバーが「12のステップ」という回復プログラムを実践するとともに、「12の伝統」という規律に従って活動を行っており、全国各地で、AAミーティングが行われ、単に断酒をするだけでなく、新しい生き方を身につけ、回復をめざす活動がなされています。
一方、断酒会は、AAに影響されたが、日本の文化や宗教観の違いを配慮して組織だてられたセルフヘルプ・グループです。AAと異なり組織化、非匿名、会費制が導入されています。実際の活動は、例会の場で、全日本断酒連盟による「断酒新生指針」と「断酒規範」によって体験談を語り、回復・新生をはかっています。
どのグループにでも、「酒をやめたい」という動機があれば参加が可能です。素面でないと参加ができない。そんなことはなく、例会やミーティングの活動の妨害にならなければ参加できます。一度、近くの断酒会やAAに実際に参加してみることが大切です。最寄りの保健所に問い合わせされれば、一番近いグループを紹介していただけると思います。
このような自助グループ活動は、今日のアルコール医療にとって、医療と同様に車の両輪の一つとして位置づけられ、回復には両輪が安定して始めて真っ直ぐに進めると考えられています。その効果は、単に断酒の継続でなく、生きる方法を患者や家族が身につけていく事であるとされ、岩をも砕き幸せの道に繋がる大事な実践活動とも言えます。
次は、意外に誤解されている抗酒剤について述べてみましょう。
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