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アルコール関連障害障害 ―第6回―
飲酒による身体問題
前回は、飲酒による問題は多方面の障害をもたらすことよりアルコール関連問題という概念が提唱されていることを話しました。今回は、それをもう少し身体の障害という方から述べてみましょう。
さて、医者仲間の常識に「アルコールによる体の障害を心得ていれば、医学を知っているといってよい」というのがあります。つまり、飲酒によってさまざまな体の障害を認めることの裏返しの言葉とも言えます。
飲酒によって、体がどうして障害されるのでしょうか。原因として3通りが考えられています。第一は、アルコールが分解されて水と炭酸ガスになる途中にアセトアルデヒドという中間代謝物質ができ、それが各種臓器に悪い影響を与えるのです。このアセトアルデヒドは二日酔いの原因であることも知られています。ですから、二日酔いになるようであれば体にはかなり障害をきたしているとも言えます。第二は、アルコールが分解される過程でビタミンBが消費されビタミンB欠乏が生じたり、飲酒する人には空酒が多いことより、いろいろな栄養障害を起こし、間接的に各種臓器にダメージを与えるのです。第三は、アルコールという物質そのものが、臓器に直接的に悪影響を及ぼす道があります。
では、具体的に体の病気としてどんな種類があるのでしょうか。
・肝臓(脂肪肝、肝炎、肝硬変症、肝線維症)
・膵臓(膵炎)
・心臓、血管障害(心筋症、高血圧、不整脈)
・消化管(マロリーワイス症候群、食道炎、急性胃粘膜病変)
・代謝障害(高脂血症、低血糖、糖代謝異常)
・脳神経(ウエルニッケ・コルサコフ脳症)
・造血器(貧血)、骨(骨粗鬆症)
・筋肉障害(ミオパチー)
この他にもいろいろな障害があるのですが書ききれません。でも、これらの病気がすべて出現する訳ではありません。人にはいろんな個性があるように、アルコールによる臓器の障害のされ方にも個性があります。Aさんは肝臓が障害されやすいが、Bさんは膵臓の方が悪くなりやすいなど、人それぞれ障害されやすい臓器が異なっています。ですから、肝臓の働きはさほど障害されていないから大丈夫と考えていると、脳神経が障害されてウエルニッケ・コルサコフ脳症になることもあります。言い換えれば、肝機能の数値が正常であるから、飲酒による問題がないという証明にはならないのです。
ここに、アルコール依存症になって入院した方が、どんな疾患や出来事でなくなったのかという統計があります。第一位は肝硬変症です。第二は、心臓の病気、第三は事故死、第四は脳血管性障害、第五は自殺です。その原因の割合は、肝臓と心臓の病気で50%以上を占め、体の病気については大いに注意を払う必要があります。アルコールという薬物は、人類にとって酔いという素晴らしい安定剤を与えてくれる一方、危険と背中合わせの状況を作り出したことも事実ですね。私たちは、アルコールによる身体問題も理解した上で、楽しいお酒を飲みたいものです。
次回は、アルコールによる精神の障害を取り上げたいと思います。
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